静かなる変革者たち

『静かなる変革者たち』精神障がいのある親に育てられ、成長して支援職に就いた子どもたちの語り〜みんなねっとライブラリー2

横山恵子、蔭山正子、こどもぴあ(著)

¥1,400 (税別)

精神障がいのある親に育てられ、成長して支援職に就いた4人の子どもたちが体験記と座談会で語る親のこと、家族、支援のありかた

在庫4 個

banner
静かなる変革者たち−
精神障がいのある親に育てられ、成長して支援職に就いた子どもたちの語り

家族は家族。支援者にはなれない ─

● この本は、精神疾患の親をもつ子どもの会(こどもぴあ)代表 坂本拓さんが、2017年10月、地方版リカバリーフォーラム地方分科会(大阪)で語った「家族は家族。支援者にはなれない」という言葉がきっかけで生まれました。

●家族であり、支援者でもあるという両方の立場の実体験から放たれたその言葉には説得力があり、そして、精神疾患を患う母親を思う愛情ゆえの葛藤から生み出されたものでした。
「家族は家族、支援者にはなれない」という言葉は、家族のケアラー役割に関して、ある種のパラダイムシフトをもたらしたのです。

● 本書には精神障がいのある親に育てられ成長して支援職に就いた四人の子どもたちが登場。
「体験記」と「座談会」を通じて、家族・支援者・社会への思いが奥深く・幅広く、語られていきます。
まさに「静かなる変革者たち」の魂の声。
彼らの「気付きの数々」をぜひお読みください。

●第3章は、横山恵子教授(埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科・大学院保健医療福祉学研究科/教授/看護師)と、蔭山正子准教授(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻公衆衛生看護学教室/准教授/保健師)による、精神障がい者の家族支援についての考察です。

編集者からみなさんへ

精神障がいをもつ親に育てられた子どもたち─
みなさんはどのように思うでしょうか。「子どもはさぞ大変だろう」。それは私も同じでした。
しかし、4人の若者達が座談会で語った言葉は、私の先入観をことごとく打ち砕いていくのです。
子どもたちは親の個性を誇りに思い、「このお母さんの子どもにうまれてよかった」と。
前半の「体験記」では、親の発症からの壮絶な人生が記され、後半の「座談会」では、なぜ、このような思いに至ったのか、「家族は家族。支援者にはなれない」とはどういうことなのかが語られていきます。
「精神障がいのある親に育てられ成長して支援職に就いた子どもたち」だからこそ語れる言葉の重みに、ぜひ、耳を傾けてください。
(編集 増田ゆきみ)

静かなる変革者たち 目次

はじめに 3

精神疾患の親をもつ子どもの会 こどもぴあ / 横山恵子 8

こどもぴあが設立されるまで 9/家族による家族学習会 13/こどもぴあの新しい活動 16

第1章 子どもたちの語り 体験記 29

1 母に対して支援者としての関わりができていないことに葛藤する日々から見えたもの  30

■坂本 拓 精神保健福祉士

幼少の頃─活発で格好いい自慢の母 31/中学生の頃─再婚、母の変化、自殺未遂。泣いている母に寄り添うだけの僕 34/高校生の頃─母から障がいを告げられて。母を支えるのが僕の役割と決意 37/福祉の専門学校に進学─「死にたい」と母に言われて僕は 39/精神障がい者支援の道へ─母を優先すべきか、自分の人生を優先していいのか 41/両親の離婚─母としての力強さを、病気という布で覆っていたのは僕だった 43/支援者として─経験を積んで分かった「家族は家族、支援者にはなれない」 44/今思うこと─「母の人生はもっと豊かになっていたかもしれない」後悔 47/母へ─病気になっても、ずっと自慢の母親だよ 48/これから─自由な人生を歩むことが本当の親孝行なのかもしれない 49

2 母の病と向き合って二十年 大人になった私は空っぽでした 51

■林 あおい 精神科看護師

母の病気が発症してから二十年以上がたちました  52 / 小学二年─母が突然発症。一晩中、押し入れの布団と布団の間で息を殺して   53 / 小学生の頃─再燃と寛解を繰り返す母。私は自分を傷つけることで 56 /中学生の頃─病気を抱え込み崩れていく家族。どうでもよくなっちゃって   59/高校生の頃─ネットで調べ母のつらさを知る。初めて母の病気と向き合うも   61 / 看護学校に進学─大好きな母のつらい姿は見たくない!    64 / 大人になって─生きづらさ。私の心は空っぽでした  67 / 家族会との出会い─心から共感しあえるという体験。自分の感情を大切に  68 / 精神科看護師となって─家族は感情が巻き込まれて当たり前  70 / 生きていきたい─よい支援があれば安心して病気になれるんじゃないかと思う   72

3 家族自身が困難を抱え支援を必要としていることに目を向けてほしい   74

■山本あきこ 精神科訪問看護師

幼少期~小学生時代─父が不在の家庭で母は姉妹を一人で育てていました 75/五歳の頃─鬼のように怖かった母。優しそうな近所のお母さん 76/小学生の頃─「あの先生は悪魔だから」。母の言うことは絶対でした 77/小学校三~四年生の頃─ 自傷すると悪い自分が許される気がしました  79/小学六年生─ 中学受験にすべて失敗した私。母はついに壊れました 80/自殺未遂、救急病院、暗い待合室─ただ泣くだけの私たち姉妹に大人たちは 82/小学卒業間近の記憶1─窓から突然母が落ちてくるのが見えました 83/小学校卒業間近の記憶2─姉の発症。すべて自分のせいだと思いました 85/中学生の頃─母はそう状態に。気のすむまで私を殴りつけののしりました 86/一時保護所から児童養護施設へ─自分を傷つけると罪悪感が薄れました 88/中学校へ復帰─初めての告白。先生がわがことのように泣いてくれました 89/中学卒業前─「あなたは自由になりなさい。あなたの人生を歩めばいい」91/高校生の頃─初めてできた友達と小遣いで肉まんを買い駅のホームで食べました 92/看護学校に進学─十八歳になった途端、母や姉のことが全て私に 94/大学進学─支援をするのは家族ではなく支援者の役割と考えられるように 95/精神科訪問看護師として生きる決意─一人の若い母親と出会って 96/家族の限界─家族もまた、困難を抱えて支援を必要としています 98

4 まさか母と同じ双極性障害に。就労でリカバリーする姿を見せてくれた母! 102

■田村大幸 就労支援員/精神保健福祉士

小学生の頃─生まれた時には発症していたが、明るくて優しくて誠実な母      103 /中学~大学の頃─ 居心地の悪い家。大学で一人暮らしの解放感 106/大学三年─「大幸君のお母さん、いつもと様子が違う。すぐ来て!」 107/母の入院─「大幸、助けて!」母の叫び声に一生分泣きました 110/進路選択─母のサポートに明け暮れる日々。就職するエネルギーもなく 112/就職─母の再入院。退職  113/海外へ─日本から逃げ出したい     117 / 再就職─まさか自分が精神疾患になるなんて  118/リカバリーの過程─病状はさらに悪化。母親と同じ双極性障害に 119/治療─医師と二人三脚で精神障がいからの脱出  121/福祉とつながって─障がいへの偏見、障がいの受容、自己開示 122/再就職─就労支援員として。当事者の自分が元気でいることでバトンをつなぐ 124/母のリカバリー─まさか、あの母がまた働ける日が来るなんて 125/両親への理解─こどもぴあで障がいを学び、父のつらさを知る 126/脱孤立のための情報と仲間─つながること大切さを実感している 127

第2章 座談会  体験からのメッセージ   129 

1    支援者となった子どもたちのさまざまな発見を形に 131

体験記を書き、自分の人生のストーリーを再構築できました 131

2    私たちが精神疾患の人たちの支援者を目指した理由 135

■坂本 拓さんのケース(体験記 三〇頁) 135

「お母さんの病気、もっと知りたい」と福祉の専門学校へ でも、それは逃げ道だったかもしれない 135/学ぶことで苦しみの背景を知り、寄り添いたいと支援者になった        138/はじめは整備士になりたかったけれど 139/自分の人生を進むという選択肢が見えなかった 140

■林あおいさんのケース(体験記 五一頁) 142

「精神科の病気について相談できる人と出会えるかもよ」友人のひと言で、看護学校へ 142/ 「お母さんを患者さんとして見たら」とアドバイスを受けて。楽になったけど何かが変わっちゃった 144/そのSOS、難しすぎる。相談されても答えられないよ 146/厳しい経済状況 働きながら学べる進路というのは条件 148

■山本あきこさんのケース(体験記 七四頁) 150

母が受けた侮辱への怒りが原点。患者さんたちが良い環境で過ごせるような看護師になりたい 150/精神科看護師なんか、絶対やんない! 152/病気があるけれど母親として生きたい! 実習での出会いで精神科訪問看護師の道へ 153/「こいつらクソだな。看護師もうやめたほうがいいよ」って思う時も。でもいつか母に提供される看護も変わると信じて 156

■田村大幸さんのケース(体験記 一〇二頁) 159

母に続き自らも発症するも、自分の経験が肯定される就労支援職に 159/退院した母が働く姿を見せてくれた! 働くことでリカバリーできると信じてる 161/福祉にたどり着くことができて今は楽になった 163

3 メリット、デメリット ─子どもの立場の家族が支援者になって 164

家族支援 ─踏み込みすぎるくらい必要。私はそれで救われた 164/病院も、家族も、家族支援に認識がなさすぎるのでは 169/「親亡き後」を心配しすぎ。何とかなるから 170/同じ目線 ─ 自分ごととして捉えられない人が多い。誰でもいつ調子を崩すか分からないって私は思える 172/家族や、当事者としての経験を生かせる支援者という仕事 173/自分にとってのメリット─自己肯定感が低かった自分が、自分と向き合い自信が持てるようになった 175

4 子どもの立場の家族として、支援者に伝えたいこと 177

家族だけに任せない。支援者が本人と家族の橋渡しを 177/もっと知って。見て。自助グループ 支援者が歯止めをかけないで 181/患者は人間だ! 当事者の力も家族の力も信じてほしい 183/支援者も閉ざされた世界にいる自覚。家族や当事者自ら体験を伝えていこう 184

5 子どもの立場の家族として、家族に伝えたいこと 185

必死に頑張っている家族。でも一生懸命の方向がちょっとずれている 185/当事者のリカバリーより先に、家族のリカバリーが重要 187/当事者の配偶者の役割が見えてこないのはなぜ 188/配偶者の支援を充実すれば、子どもの状況も変わってくる 190/ 家族は支援者にはなれない 支援者は家族にはなれない 191/「親を患者さんだと思いなさい」は「親を捨てなさい」と同じこと 193/家族でできないことを家族自身が認めるべきだ 194/僕が勝手に母を支援。外につながっていたら、母の人生も豊かになっていたと思う 197/家族は支援者、という考え方が引きこもりにつながる 198 /障がいがあっても、親は親としての役割を果たそうと思っている 199/子どもが子どものの人生を歩むことが、母の一番の喜び 200

6 当事者に伝えたいこと ─親への思いを通して 202

怒りの矛先は 202/こどもぴあにつながって、病気を理解し、怒りから回復 205/怒り ─幼い頃は自分に向き、自分を責める 205/自分の家族の世界がすべての世界 選択肢も知らない 206/子どもを産むという不安 ─支援者のサポートを受け入れて 209/伝えたい─子どもである私たちが、今、思うこと 210/親は親で、子どもは子どもで幸せになれる 211/「産んでくれてありがとう」 今はそう言えるようになりました 212

第3章 考察 

まとめ ―家族であり、支援者であること / 蔭山正子 216

支援者という職業選択に秘められた思い 217
子どもが後遺症としてもつ「生きづらさ」 219
人生における「こどもぴあ」と支援者であることの意味 221
支援者は意外にも天職だった 225
当事者や家族の背景をイメージして、深く考察する 225
当事者への温かいまなざしと対等性 226
家族支援の必要性や有効な方法が分かる 227
家族である支援者だから見えたこと、分かったこと 227
専門的知識の限界と体験的知識の価値 227
当たり前」に違和感を覚える 230
現れた、静かな変革者 233
家族は支援者になれない 234
家族間に生まれる当たり前の感情を消すことは、家族であることを止めること 234
家族が余裕を持てないと、優しくなれない 236
家族だけで支援することは当事者のリカバリーを遅らせる 237
親への思い、感謝 238
支援者となった子どもたちが語ったこと ―

家族へのメッセージ 支援者や社会に対するメッセージ 横山恵子 240

おわりに 248

みんなねっとライブラリー第2弾
みんなねっとライブラリー

こころが大切にされる時代に向けて—

公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会 監修のもと、生きづらさを抱える本人と家族が安心して暮らせる社会をめざす一般向け書籍シリーズで、家族、当事者、医療、福祉、介護など、様々な分野の著者が執筆します。令和元年7月創刊。

「みんなねっと」https://seishinhoken.jp/

※みんなねっとは精神に障がいのある方の家族が結成した団体です。ひとりで抱え込まずに、まずはお気軽にご相談を。

シリーズの装丁は、矢萩多聞氏
02GR_TAMON-credit

中学で不登校となったことを機に南インドへ渡り、10代のほとんどをインドで暮らしながら、独自の才能を開花させた装丁家が「こころ」を伝えていきます。

「矢萩多聞氏 プロフィール」

画家・装丁家。1980年横浜生まれ。9歳のとき、はじめてネパールを訪れてから、毎年インド・ネパールを旅する。中学1年生で学校を辞め、ペンによる細密画を描きはじめる。1995年から、南インドと日本を半年ごとに往復し暮らし、個展を開催。2002年から本をデザインする仕事をはじめ、これまでに500冊を超える本をてがける。2012年、京都に移住。現在、インド、京都を行き来し、本づくりと画業、ワークショップなど多岐に渡って活動中。

著書に『偶然の装丁家』(晶文社)、『本の縁側』(春風社)、共著に『本を贈る』(三輪舎)などがある。

基本情報

書名:静かなる変革者たち
精神障がいのある親に育てられ、成長して支援職に就いた子どもたちの語り
著者:横山恵子、蔭山正子、こどもぴあ(坂本 拓、林あおい、山本あきこ、田村大幸)
発売日:2019年11月8日
定価:1,400円(税別)
版型:四六判
ページ数:226ページ
本文色:1色
ISBN:978-4-295-40370-8
Cコード:0036
発行:株式会社ペンコム
発売:株式会社インプレス