読者の方からご感想をいただきました「自分が持っている偏見を少しでも無くそうと」『静かなる変革者たち』を読んで
ハートねっと日立市民の会のみなさん
私たちは自分が持っている偏見を少しでも無くそうと外に向かって声に出していることに気づかされました
「ハートねっと日立市民の会」(精神障害者を守る家族会)会長で、茨城県精神保健福祉会連合会副会長の弓野孝子さんより、『静かなる変革者たち 精神障がいのある親に育てられ、成長して支援職に就いた子どもたちの語り』へのご感想をいただきましたので紹介させていただきます。
はじめまして。
「静かなる変革者たち」を読ませていただきました。
私は精神障害者の親という立場の人間ですが、一度読んでこの本はぜひ家族会の人たちに読んでもらいたい!と思いました。
今月の定例会の時に紹介させて頂きます。
『静かなる変革者たち』に登場するのは、「精神障がいのある親に育てられ、成長して支援職に就いた子どもたち」で、立場は違いますが、私たち「家族」とも共通するところも多く、たくさん学ばせていただきました。
本の中で、坂本拓さん(こどもぴあ代表)のメッセージ、「家族は家族で、支援者にはなれない」・・・なるほど!
私たちも親ができることには限界があると感じています。
でも親という立場より、子どもという立場の人のほうが辛いことを知らされました。
また、P244に、こんな記述がありました。
ある精神科医が、私に教えてくれたことがあります。
「精神障がいについての偏見は、一般の人よりも、医療者の方が強い。医療者よりも強いのが家族、一番強いのが、当事者だよ」
私たち家族会は、毎年大学の看護科の学生さんたちに家族の体験談を聞いてもらっていますが、まさに私たちは自分が持っている偏見を少しでも無くそうと外に向かって声に出していることに気づかされました。
対外的な活動の時は決まってピンクのポロシャツ、背中に大きく「ハートねっと日立市民の会」と「ハート」のマーク。
これを着て勇気をもらって活動しています。
私は、日立法人会女性部会の部会長をしており、そういった仲間にも理解と支援の協力をいただいており、事務所の運営を支えてもらっています。本当に感謝です。
では今から、『『追体験 霧晴れる時』 〜今および未来を生きる 精神障がいのある人の家族 15のモノガタリ』も読まさせていただきます。
著者の横山恵子先生
「精神障がいについての偏見は、一般の人よりも、医療者の方が強い。医療者よりも強いのが家族、一番強いのが、当事者だよ」
弓野さんが引用されているP244の記述につきまして、本文より紹介させていただきます。
横山恵子先生の「支援者となった子どもたちが語ったこと」より
三つ目の、家族だけで支援することは当事者のリカバリーを遅らせるということです。
これは、大変重要な視点です。最近、「八〇五〇問題」「七〇四〇問題」という言葉を耳にしますが、これは、引きこもりの長期化などで、本人と親が高齢化、支援につながらないまま孤立してしまうことです。その結果、精神的に追いつめられた子どもが親に暴力をふるったり、それに耐えかねて、将来を悲観した親がわが子を手にかけたりといった事件は、これまで後を絶ちません。特に最近は、マスコミに取り上げられるような、当事者や家族の悲劇的な事件が数多く起きています。
その背景にあるのが、家族だけで何とかしようとする家族の姿勢です。家族だけで頑張れば頑張るほどに、当事者と家族は社会から孤立していきます。この背景に、家族のスティグマ(偏見)があると言われます。スティグマは、外の世界につながろうとする時、障壁となります。
こうした偏見は社会にだけあるように思いますが、それ以上に精神医療や福祉に関わる支援者、家族やご本人の中にも存在します。これは、社会の偏見を自分の中に受け入れた状態であり、セルフスティグマ(内なる偏見)と言われ、その人の行動に大きな影響を与えます。
ある精神科医が、私に教えてくれたことがあります。
「精神障がいについての偏見は、一般の人よりも、医療者の方が強い。医療者よりも強いのが家族、一番強いのが、当事者だよ」
その話を聞いた当初は、とても意外でしたが、私自身も最近、そのことを強く感じるようになりました。このセルフスティグマは、支援者の中にもありますが、それ以上に家族や本人の抱えるセルフスティグマは強く、それが自らを苦しめるとともに、他者への相談や受診の遅れにつながります。外界との関係を閉ざし、回復への一歩を踏み出す大きな障害となっているように思います。家族はもっと支援者とつながりましょう。家族だからできることもありますが、支援者の方ができることが、たくさんあり、うまくいく場合が多いのです。ぜひ、支援者を頼ってほしいと思います。
静かなる変革者たち
タイトル「静かなる変革者たち」に込めた編集の思い
この本のサブタイトルは「精神障がいのある親に育てられ、成長して支援職に就いた子どもたちの語り」。
精神障がいの当事者を親に持つ若き支援者たちの体験談と座談会、研究者の分析からなる本です。
多くの方に、なぜ、タイトルは「静かなる変革者たち」なの? という疑問をいただきます。
それは、この本が自らの体験を未来の子どもたちのために行動する若者たちが登場しているからなのです。
彼らは言います。
「生きやすさ、いいですね。そういう世界になってほしい。自分たちの経験が少しでも役に立つのなら、ずっと隠してきた過去も公開してもらってもかまいません」
ぜひ、『静かなる変革者たち』に込めた彼らの声に耳を傾けてほしいと願います。
(ペンコム代表 増田)
生きづらさに寄り添う『みんなねっとライブラリー』シリーズ
ペンコムでは『みんなねっとライブラリー』を創刊しました。
「みんなねっとライブラリー」は、公益社団法人全精神保健福祉会連合会(みんなねっと)監修のもと、生きづらさを抱える本人と家族が安心して暮らせる社会をめざす一般向け書籍シリーズです。
家族、当事者、医療、福祉、介護など、多方面の著者が執筆し、わかりやすく、広く一般の方に「こころの病」について理解を深めてもらおうという内容です。
シリーズの装丁は、ブックデザイナーの矢萩多聞氏が手掛けます。
静かなる変革者たち-精神障がいのある親に育てられ、成長して支援職に就いた子どもたちの語り(みんなねっとライブラリー2)
¥1,540
精神疾患のある親に育てられ、成長して支援職に就いた4人の子どもたちが体験記と座談会で語る親のこと、家族、支援のありかた
在庫4 個