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精神疾患の親をもつ子どもの会「こどもぴあ」の活動を知ってほしいー『静かなる変革者たち』の掲載ページを公開します(ダウンロードPDFあり)

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こどもぴあは精神疾患の親に育てられた子どもたちのグループです

通学、通勤しながら家族の介護を担っている若者「ヤングケアラー」が社会の関心を集めています。
ヤングケアラーの中には、「親が精神疾患を持っている」ケースもあり、大阪大学大学院医学系研究科の蔭山正子准教授らによる研究「「精神疾患の親をもつ子どもの体験と学校での相談状況:成人後の実態調査」によると、
・親の病状悪化に伴い、親の情緒的ケアをしたり、暴言・暴力に遭遇するなどの体験をしていた。
・ヤングケアラーとして、料理・掃除などの家事を子どもが担っている場合もあった。
とあるものの、
・精神疾患の親をもつ子どもたちは、家庭内でのおとなの喧嘩、極度の不安、心身の不調と、子ども自身への支援が必要であるにもかかわらず、小学生の91.7%が相談経験なしと回答。
していることが明らかになっています。

こうしたなか、2018年1月には、「精神疾患の親をもつ子どもの会」(こどもぴあ)が誕生し、思いを共有しながら活動を続けています。

2019年11月には、こどもぴあによる初の本『静かなる変革者たち 精神障がいのある親に育てられ、成長して支援職に就いた子どもたちの語り』がペンコムより出版されました。

ここでは、書籍『静かなる変革者たち』より、「こどもぴあ」について、同書の著者の1人、埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科の横山恵子教授が執筆された箇所を公開いたします。
1人でも多くの方に「こどもぴあ」とその活動、精神疾患の親のもとで育つこどもたちに関心をお寄せ頂きたいと願っています。

精神疾患の親をもつ子どもの会 「こどもぴあ」について  横山恵子

今回、本書(『静かなる変革者たち』)に登場してくれる四人は、精神疾患の親をもつ子どもの会(こどもぴあ)のメンバーです。

こどもぴあは精神疾患の親に育てられた子どもたちのグループです。こどもの立場の家族が集まり、少しずつ交流の輪が広がる中で、二十代の若いメンバー三人が、代表・副代表となって、二〇一八年一月に「精神疾患の親をもつ子どもの会(こどもぴあ)」を正式に設立しました。子どもと言っても、こどもぴあは成人した子どもたちのグループで、年齢も二十歳前後から五十代、六十代の方など、年齢の幅が大変あります。また、親の疾患に関しても、統合失調症、気分障害(うつ病や双極性障害)、パーソナリティ障害、アルコール依存症、発達障害など、多様です。しかし、仲間にとっての子どもの経験は共通していて、同じ仲間としての話し合いができるのです。

「こどもぴあ」は、東京で生まれましたが、全国に広がり始めています。現在、東京、大阪、札幌、福岡で、子どものグループの活動が始まっています。「家族による家族学習会(以下、家族学習会)」も、東京、大阪、札幌で開催されています。そして、仲間が集まり、つながりながら、さまざまな活動を始めています。

■こどもぴあが設立されるまで

こどもぴあは、家族学習会のプログラムを活用することで、設立されました。

私たち(横山と蔭山)が初めて精神障がいの親をもつ子どもの立場の方に出会ったのは、二〇一三(平成二十五)年六月です。千葉県の家族会が開催した家族学習会の参加者の効果を調査するためのインタビューに伺った際、親の立場の方が多い中で、一人の子どもの立場の家族に出会いました。その後、その方が東京で子どもの立場の家族が少人数で交流していることを教えてくださり、二〇一四(平成二十六)年五月にその方々に出会いました。このグループは、二〇一三年八月に「親&子どものサポートを考える会」が開催した、「第一回全国版こどもの集い」に参加して知り合った四十~五十代の六人の方々で、三カ月に一回程度、定期的に集まって交流しているとのことでした。

二〇一四年に、その中の四十代後半の子どもの立場の家族三人にインタビューをさせていただくことで、子どもたちの抱える困難を初めて知ることができました。子どもたちは大人になっても孤立し、社会から隠されていること、そして、生きづらさを抱える中で、仲間を求めていることが分かりました。そこで孤立した子どもの立場の家族がつながり、仲間同士で体験を語り合うことで、大人になった子どもたち自身の回復を図れるのではないかと考えました。

そのためには、子どもの立場の家族のグループを作る必要があり、このグループ作りに、家族学習会の活用が有効だろうと考えました。家族学習会はこれまで親を中心として開催されてきましたが、二人の子どもの立場の家族がたまたま家族学習会に参加し、子ども同士の出会いによって、とても救われたと話していました。

インタビューに協力してくださった三人に協力を頂き、二〇一五年五月十六日に、東京大学で、子どもの立場の方限定の、子ども版家族学習会セミナーを初めて開催しました。二十人程の方が集まりました。セミナーでは、二人に家族学習会の体験、さらに、別の二人に子どもの体験を語っていただきました。後半はグループワークを行いました。グループワークでは、他者に自分の体験を話したのは初めてだと、涙を流して語る方もおり、本当に忘れられないセミナーとなりました。

さらに、同年九月五日にセミナーのフォローアップを開催。ここでは、初めての子ども版家族学習会の参加者を募りました。

「子どもの立場の家族による家族学習会(以下、子ども版家族学習会)」は、二〇一五(平成二十七)年から始まりました。二〇一五年には六人の担当者(プログラムの運営・進行役)が、五人の参加者に初めて家族学習会を実施しました。会場は、市川市にある地域精神保健福祉機構(コンボ)の会議室でした。

翌年の二〇一六(平成二十八)年には、二回目の子ども版家族学習会セミナーを開催して参加者を募り、二回目の子ども版家族学習会を、港区にある東京都障害者福祉会館を会場に開催しました。二〇一五年の参加者のうちの二人が担当者になり、合計七人の担当者と、十一人の参加者に対して行いました。希望者が多く大人数になってしまいましたので、二グループ同時で開催しました。

二〇一七年の子ども版家族学習会は、時期をずらして二回開催しました。その年の二回目は、大阪から二名の参加者を迎えました。翌年の大阪での子ども版家族学習会の開催準備であり、大阪でのこどもぴあの設立を目指したためです。

その後、二〇一八年には一回、二〇一九年には一回開催するなど、毎年、開催を続けています。家族学習会の担当者も、その都度、半数程が新しい方と交代しますので、担当者経験のある「仲間」が増え、仲間同士のつながりが一層強固となり、こどもぴあの運営に関わるメンバーも増えました。

二〇一七年七月からは、精神疾患をもつ親に育てられた子どもの集いを開催しています。家族学習会は小グループで五回一クールの開催ということで、参加できる人は限られてしまいます。家族学習会の担当者を経験したことで、運営メンバーがグループ進行に慣れてきたこともあり、定期的なミーティングを開催することになりました。当時の運営メンバーは十八人です。集いに参加される子どもの方々は、毎回、四十人程度を定員としていますが、全国から参加されており、現在、延べ参加者数は二百五十人を超えています。

子どもの集いは、誰にも悩みを言えずに孤立していた、かつての自分と同じようにつらい状況にある子どもの立場の家族が、ひとりでも多く仲間とつながり、孤立から解放されることを願って開催しています。

■家族による家族学習会

家族学習会とは、同じ立場にある精神障がい者家族会会員が、家族会につながっていない家族に提供する、体系的な家族ピア教育プログラムです。テキストを用いて、病気や障がいの正しい知識を提供し、家族自身の体験的知識を共有します。

家族学習会の開発にあたって、諸外国の家族ピア教育プログラムを参考にしました。米国では、一九九一年に全米精神障害者家族会連合会(NAMI、本部バージニア州アーリントン)によって「Family-to-Family Education Program(FFEP)」が開発され、全米各地で実施されています。また、香港では、二〇〇〇年に「Family Link」が開発され、香港を中心に周辺アジア諸国に広まっています。わが国では、二〇〇七年度から、地域精神保健福祉機構(コンボ)が、統合失調症の「家族による家族学習会」という、家族ピア教育プログラムの開発・普及事業を開始しました。

家族学習会では、統合失調症の家族を対象に、同じ立場の精神障がい者家族会の会員が、テキストを用いて、病気や障がいの正しい知識を提供し、家族自身の体験的知識を共有します。小グループで行う体系的なプログラムで、一回三時間、五回同じメンバーで開催するものです。このプログラムは全国に広がり、二〇一七年度までに全国二十六都道府県で実施され、延べ五千人が参加しています(二〇一九年三月末現在)。

しかし、「家族学習会」を実施している家族会員の多くは親であるため、きょうだいや子どもの立場の家族が参加する機会は多くありません。特に、世代の違う子どもの場合は、これまでのテキストでは体験の共有が難しく、親中心のグループでは、共感が得にくいという状況があります。そこで、親たちが用いる「家族心理教育用のテキスト」ではなく、ライフサイクルに沿った、子ども版オリジナルテキストを作成しました。
家族学習会は、担当者も参加者も同時にエンパワメントされ、元気になるプログラムです。家族学習会では、子ども版のオリジナルテキストを用いて、幼児期から小学生、中学生、高校生、成人、恋愛や結婚、子育て、介護、というように、ライフサイクルに沿って、体験を話し合っていきます。心の奥にしまいこんでいた過去の記憶や体験が思い出されて、つらい気持ちが起きることもありますが、新たな発見があるといいます。

年齢は、二十代から六十代まで幅広い方々が参加されましたが、年齢が離れていて話しづらいなどの違和感はなく進行していました。結婚、子育て、親の介護についても話しますので、多様な年代があることで、将来に起こりうることも予測でき、とても参考になるようでした。

参加者の振り返りでは、「過去の日々、自分の思いを振り返る機会になった」「抑えていた感情があふれた」「親に対して違う見方の発見ができた」「これからは自分のことを考えたい」「楽になった。最近穏やかな顔をしていると言われる」「親の障がいを受容する入り口に立てたと思う」と感想を述べていました。

プログラムの運営・進行役を行う担当者は、「これまで前に出ることはなかった自分には考えられない活動だ」と言います。そして、参加者が回を重ねるごとに元気になる姿を目の当たりにして、参加者の変化をうれしく感じ、自分の体験が役立つことで、自信を回復していきます。担当者自身も、「一番つらかったことを思い出し、涙が出て、すっきりした。自分の感情を出せるようになった」と話しました。

さらに、「子どもの立場同士で話せる場が必要」「人の良い所を見ようとする意識に変化」「これからも自分のできる事をしたい」「子どもに関わる人たちに、体験を知ってもらうことは、社会を変える力になる」と話しました。

■こどもぴあの新しい活動

こどもぴあは、新たな活動を始めています。

二〇一六年からはホームページを立ち上げるとともに、子どもの体験を話してほしいと、家族会や支援者の講演会に招かれることも増えました。さらに、「精神に障害がある人の配偶者・パートナーの支援を考える会(以下、配偶者の会)」と連携した活動も始めました。「配偶者の会」で開催する定例会では、配偶者が語り合っているときに、こどもぴあの成人した仲間が、子どもの立場である未成年の高校生や中学生、小学生と、小グループで「子どもたちの集い」を行っ​ています。参加した子どもたちは、せきを切ったように自分たちのつらい現状を話してく​れました。家族学習会もそうでしたが、担当者は、二十代から五十代の方々ですが、年齢​が離れていることでの違和感がありませんでした。子どもたちに、将来には希望があるこ​と、希望を持って今はしっかり勉強するようにというメッセージを送っています。​

配偶者の方々が支援されることで、父親、あるいは母親が家族の中で安定した存在と​なって、家族のコミュニケーションが図られることは、子どもが安心できる環境作りに直接つながります。今後はこのような活動も広がっていくように思います。

​さらに、子どもの体験を直接、小中学校、高校の先生たちに伝えたいと、教材作りの活動も始めています。こどもぴあからは、これから、さまざまな活動が始まることと思います。

こどもぴあホームページ https://kodomoftf.amebaownd.com/

生きづらさに寄り添う『みんなねっとライブラリー』シリーズ

ペンコムでは『みんなねっとライブラリー』を創刊しました。

「みんなねっとライブラリー」は、公益社団法人全精神保健福祉会連合会(みんなねっと)監修のもと、生きづらさを抱える本人と家族が安心して暮らせる社会をめざす一般向け書籍シリーズです。

家族、当事者、医療、福祉、介護など、多方面の著者が執筆し、わかりやすく、広く一般の方に「こころの病」について理解を深めてもらおうという内容です。

シリーズの装丁は、ブックデザイナーの矢萩多聞氏が手掛けます。

Doticon_red_Right『みんなねっとライブラリーシリーズ』創刊

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