連載5:心病む夫と生きていく方法
第1章 語り合う 妻たちのホンネ(3)ー1番つらかったことは
1番つらかったことは
■将来への不安。この人とともに行く人生を選ぶことが、正しいのか
双極性障害と言われても、初めはどんな病気なのかよく分からないというのがすごくつらかったというのと、退職転職を繰り返していたので、家計的にもすごく不安定で。
結婚したときは共働きでしたが、夫の収入が安定していたので、専業主婦になっていたんです。夫が退職したら収入がゼロになってしまったので、また私が仕事を始めました。
でも夫の調子が悪くなると、仕事をしながら夫をサポートしなければいけなくて、体がいくつあっても足りないんです。
夫は、妻である私ともうまくコミュニケーションが取れないし、会社でも問題を起こすので、会社の人に申し訳ないというのもあるし。
近所の人から、白い目とまではいかないんですが、「どう大丈夫?」と聞かれても、病名までは言えません。
なんとなく「あの家大丈夫なのかしら」というような目で見られるから、仕事に疲れて家に帰るときに、近所の人に会ったりすると一段と落ち込むというか、そういうことがあります。
●就労が安定しない
精神疾患は病状が不安定になりがちという疾患特性があるため、安定して仕事に復帰することが難しいこともある。リワーク「Re-Work(再び働く)」という復職プログラムもあるので、主治医に相談を。
●夫が病気になると経済的不安が大きい
男性が仕事、女性は家庭、というジェンダー役割のなか、妻は結婚後に専業主婦になった家庭が多く、夫が精神疾患を発症すると仕事を続けることが難しくなり経済的に不安になる。精神疾患を患う夫も苦しめ、一緒に暮らす妻にとってもつらい。仕事、家事、育児の分担を考えることも重要。
■こんなに大変なのに夫からは文句が
しかも、夫からは感謝されることはない。それどころか、「自由にしてもらえない」と夫から文句を言われたりするんですね。
もう疲れ果てちゃって。
自分のやってることに、肯定感が持ちづらいときにつらいなと思いました。
■子どもをうむという人生にも心が引かれて
子どもをうんで、育てるという未知の世界に、ちょっと心が引かれたこともありました。
●育児支援
米国では女性の約1/3、男性の約1/5が過去1年に精神疾患を罹患しており、これらの女性の65%が母であり、52%が父親である。日本においても子育ては社会全体で担うのだから、精神疾患があっても育児ができるよう社会として支えていく必要がある。
1)Nicholson,J.,D,P.,Biebel,K.,et al.(2001)Critical Issues for Parents with Mental Illness and their Families.Center for Mental Health Services Research,Department of Psychiatry,University of Massachusetts Medical School.Retrieved from
https://escholarship.umassmed.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1142&context=psych_pp
■お金の問題、この先どう生きていったらいいのか
手当金だけで生活するのは苦しくて、貯金を切り崩しながらの生活が結構長く続いたので、ここから先、どうなっていくのかという不安が毎日付きまとっていました。
と同時に、夫と2人で、この先どう生きていったらいいのか分からないといった漠然とした不安が襲ってきて、そのときは2人でただ泣くしかできないこともありました。
●病状による「お金の対策」も重要
精神疾患を患うと、休職や離職になることも多く、病気の回復に見通しが立ちにくいという病気の特性もあり経済的不安は生じやすい。そのうえ、躁状態では、浪費も起きてしまうこともある。クレジットカードを持たさないようにしているケースもある。そのような対策があることを支援者が伝えることも必要。
【次回へ続く】